【レポート】上野周三氏作庭 護国寺庭園見学会
2025年11月22日に、上野周三さん作庭の護国寺の庭園の見学会を行いました。
この企画は、9月に行った南アルプス登山の締めくくりとして、上野さんご本人にご自身の庭園作品をご案内いただき、その創作の智慧に学ぼうというものです。
当日は、日本庭園協会会員の現役の造園職の方々だけでなく、東京農業大学の学生さんも多く参加してくださり、上野さん含め総勢36名が集まりました。


護国寺は、国の重要文化財に指定された本堂や、実業家であり茶人の高橋箒庵が整備した茶室群がある寺院として知られ、徳川五代将軍・綱吉が創建した祈願寺です。上野さんが手がけられたのは、境内正面の仁王門を入って右手にある本坊庭園はじめ、庫裏の庭の作庭、境内に点在する茶室「不昧庵」「蘿装庵」「圓成庵」「宗澄庵」などに付随する露路の改修です。これらは1996年から1999年にかけて取り組まれたもので、現在もこれらのお庭の手入れは上野さんの造園会社「麻布 植祐」が手がけているそうです。

本坊庭園は一般公開されていて、誰でも観ることができる場所にあります。施設へのアプローチの両脇に対になって造られたこの庭園は、向かって右側の「なげしの松」と春日燈籠を中心にした象徴的な構成が目を引きます。この庭園は、もともとこの場所にあったこの松を見た時に葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖波裏」が上野さんの頭に浮かんだことから、この松を大波に見立てて、石組みで荒磯の風景を表現することを発想してつくられたものだそうです。春日燈籠を頂点に放射状に配置され荒々しくせり上がる石組みは、どこか南アルプスの地蔵ヶ岳のオベリスクを思い出させます。ただ荒々しさの中にも、全体としては石の気勢が丁寧に春日燈籠へ集束していく美しいプロポーションがあるところも見逃せません。石材は、檀家様から譲り受けて境内に置かれていたものを利用したのだそうです。その場にあった自然の素材を巧みに活かして、壮大な世界を描いてみせる、まさに日本庭園の真骨頂がここにありました。


茶室と露路は茶会などで利用する方以外の一般公開はされていませんが、今回は特別に拝見させていただきました。境内にある茶室群は、大正時代から昭和初期の頃に檀家総代を務めていた高橋箒庵が、護国寺を東京の茶の本山とするべく整備したものだそうです。ただ時が経ち、茶室の修繕や改築などで庭もその形を変えていく中で、それらを現在の姿に整えたのが上野さんです。上野さんはこれら護国寺の茶庭について雑誌の特集の中で、「五代将軍徳川綱吉…近代の大数奇者である高橋箒庵…その遺徳に恥じない茶の庭をつくることに私は専念した。(筆者編、隔月刊誌『庭』no.197より)」と述べておられます。庭を継承することの重責を受け止めて、なおかつご自身の感性を発揮して時流の庭を創作していく、その姿勢に大変感銘を受けました。



上野さんの優しい笑顔と大きな身振り手振りで伝えてくださる解説に引き込まれているうちに、あっという間に日が傾き、見学会の後には皆で懇親会を行いました。こうして「庭園」を囲んで老若男女が集まることができることに少し不思議さを感じつつ、庭園には普遍の魅力が備わっていることを実感しました。


南アルプス登山企画から足掛け三年にもなった上野周三さんの作風の原風景を観る会は、こうして大勢の方にお集まりいただき、盛大に完結させることができました。自然物を敬い、活かす。そしてその精神性を継承していくこと。上野さんの原風景体験とそのお仕事から、この一連の企画にご参加くださった皆さんそれぞれが、多くの学びを得たことと思います。上野さん、ありがとうございました!

この企画を行うにあたり護国寺のご住職ならびに関係者の皆様には大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。











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